がんと向き合い生きていく

白血病や悪性リンパ腫に対して1回だけで済む治療法がある

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 何か夢のある新しい治療法がないものか……探しているうちに、こんな治療法がありました。特殊ながんに対してですが、たった1回の治療に対して保険適用が認められている治療法です。たった1回だけなのです。

 再発または難治性のCD19(がん細胞の表面にある抗原)陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)に対しての「CAR-T療法」という治療です。

 患者さん自身のリンパ球の中のT細胞(免疫細胞)を取り出し、遺伝子改変操作でCAR(キメラ抗原受容体)と呼ばれる特殊なタンパク質をつくり出すことができるようにしたうえで、このCAR-T細胞を患者さん自身に投与するのです。これは、たった1回だけの治療です。

 私は、2年前にこの治療法でがんが消えた方がいるという報告を知りました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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