もっとも、私が心臓血管外科医になった頃と比べると、画像診断機器は信じられないほど進化しています。いまは、超高解像度カメラで撮影された画像から、心臓の機能はどれくらいの状態なのかを判別できたり、血液の逆流がどちらに向かっているのかどうかもわかります。手術前の画像検査によって、どこから、どうアプローチして、どのような処置を行い、どう終わらせるかまでの最適なシミュレーションも可能になりました。
優れた画像診断機器がない時代は、実際に自分の目で見ながら手探りで手術を行っていました。予定外の部分を切開して大量出血を招いてしまったケースなども経験しています。しかし、正確な画像が得られるいまはそうしたアクシデントは、ほぼありません。仮に予定外のところを切開して穴を開けてしまったとしても、術中にCTで確認して特に大きな問題がないことがわかれば、不測の事態を起こさないように修復して終わらせることができるのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」