■持続する胸痛があればすぐ受診
実際、私の友人は新型コロナ感染症による肺炎が良くなった後、血栓症による心筋梗塞で亡くなっています。同じように、新型コロナ感染症の症状が治まった後に血栓症を起こした患者さんを血液浄化療法で救命できたケースもあります。血液を体外に設置した機械に排出し、特殊なフィルターを通過させてサイトカインや血液凝固因子を吸着してから体内に戻す治療です。この血液浄化療法は肺炎治療におけるECMO(体外循環式人工肺治療)に至る前の特殊治療で、血液濾過に使用するフィルター管理に慣れた医療機関でなければ実施できない治療なので、ほかの施設であれば命を失っていた可能性もありました。
こうした血栓症のリスクを考慮して、当院では新型コロナに感染した患者さんは、症状が治まり療養期間が終わっていても、それから1カ月くらいはよほど緊急性がない限り大きな手術は行っていません。大きな手術自体が血液の凝固活性を高進する方向に生体反応を傾かせるのです。それに加え、体力が落ちている術後に、心筋梗塞、脳梗塞、肺塞栓などの合併症を起こしたら、本当に命取りになる危険があるためです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」