上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

コロナ感染は症状が治まっても血栓ができやすい状態が続く

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■持続する胸痛があればすぐ受診

 実際、私の友人は新型コロナ感染症による肺炎が良くなった後、血栓症による心筋梗塞で亡くなっています。同じように、新型コロナ感染症の症状が治まった後に血栓症を起こした患者さんを血液浄化療法で救命できたケースもあります。血液を体外に設置した機械に排出し、特殊なフィルターを通過させてサイトカインや血液凝固因子を吸着してから体内に戻す治療です。この血液浄化療法は肺炎治療におけるECMO(体外循環式人工肺治療)に至る前の特殊治療で、血液濾過に使用するフィルター管理に慣れた医療機関でなければ実施できない治療なので、ほかの施設であれば命を失っていた可能性もありました。

 こうした血栓症のリスクを考慮して、当院では新型コロナに感染した患者さんは、症状が治まり療養期間が終わっていても、それから1カ月くらいはよほど緊急性がない限り大きな手術は行っていません。大きな手術自体が血液の凝固活性を高進する方向に生体反応を傾かせるのです。それに加え、体力が落ちている術後に、心筋梗塞、脳梗塞、肺塞栓などの合併症を起こしたら、本当に命取りになる危険があるためです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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