Dr.中川 がんサバイバーの知恵

難治すい臓がんに光 国内7番目の重粒子線治療の施設が誕生

山形市の東日本重粒子センターの重粒子線でがん細胞を破壊するための装置(C)共同通信社

 たとえば、難治がんの一つすい臓がんは、X線より重粒子線がよいでしょう。X線と抗がん剤を併用する化学放射線治療では、消化管への影響や白血球の低下などによって治療の継続が難しいことがありました。

 重粒子線では、X線より高い線量を照射し、抗がん剤は最大限投与できます。照射回数は、X線の半分以下の12回。それでいて副作用の頻度は、抗がん剤の単独投与と同等です。

 臨床試験のデータでは、2年生存率は48%。正常組織への障害は、72例中わずか3例でした。化学放射線の治療成績は10~20%ほどですから、その差は歴然です。

 肺がんでは、X線による定位放射線治療では4~6回の照射ですが、重粒子線なら1回。ステージ1の肺がんで5年生存率は6割ほど。進行肺がんの2年生存率は約5割と悪くありません。さらに骨軟部腫瘍も、重粒子線がよいと思います。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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