Dr.中川 がんサバイバーの知恵

歌手・水木一郎さんが他界…肺がんの脳転移は放射線と薬の順番で予後が変わる

水木一郎さん(C)日刊ゲンダイ

 この病態のため髄膜播種の予後はとても悪い。無治療だと、その生存期間中央値は4~6週間。治療例で2~3カ月とされます。

 体のどこかにできたがんが、脳に転移したのが転移性脳腫瘍です。全がん患者のうち10人に1人が脳転移を起こし、その50%が肺がん由来で、15%が乳がん由来。転移性脳腫瘍との関係においても、肺がんの治療はとても重要です。

 転移性脳腫瘍患者の死因を検討した結果、元の肺がんが原因となったのがほとんどで、転移性脳腫瘍が直接の原因となったのは15%に過ぎませんでした。そのうち80%が髄膜播種です。

 つまり、転移性脳腫瘍でも、脳の実質にとどまる脳転移なら、命に影響しないことがほとんどということ。この差は、とても大きい。私の患者さんでも、脳転移が単発か少数の方は長期生存どころか、治癒したケースもあるのです。脳転移と髄膜播種とは、別の病気といってもよく、脳転移は治療で制御可能ということなのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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