上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

動脈硬化を予防するには「脂質」のコントロールが最重要

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 ただ、スタチンの効果には限界があり、高齢者では対応が難しいうえ、高コレステロール=動脈硬化体質が強い人たちに対してはそれだけで抑制できるわけではありません。また、スタチンは悪玉のLDLコレステロールを減らしますが、善玉のHDLコレステロールを増やす効果は十分ではなく、中性脂肪抑制効果もないためやはり限界があります。さらに、脂質異常症が増え始めた2000年以降は、糖尿病の患者さんも増えてきたため、動脈硬化の予防には血糖の管理も重要になってきました。今回のガイドライン改定で糖尿病患者のコレステロール管理目標値が厳格化されたのも、その流れを強化した形だといえるでしょう。

 薬だけではどうしても限界があるため、動脈硬化の予防には食事の改善が欠かせません。同ガイドラインでは、動脈硬化のリスクを減らす食事として、「肉の脂身、動物性脂肪、加工肉、鶏卵の大量摂取を控える」「魚の摂取を増やし、低脂肪乳製品を摂取する」「未精製穀類、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆および大豆製品、ナッツ類の摂取量を増やす」「糖質含有量の少ない果物を適度に摂取し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える」「アルコールの過剰摂取を控え、25グラム/日以下に抑える」「食塩の摂取は6グラム/日未満を目標にする」ことが推奨されています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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