健康の「素朴な疑問」

「モーツァルト」を聞くと頭が良くなるのは本当か? 集中力が高まる?

写真はイメージ(C)iStock

 その後、追試がいくつも行われ、たくさんの論文が報告されました。その中には「モーツァルトだけでなく音楽ならすべて良い」というものから、「まったく効果はない」というものまで、さまざまな結果が示されました。現在もその結論は出ていません。

 そもそも人は音を鼓膜で空気の振動としてとらえます。その振動は内耳の感覚細胞で神経信号に返還され、大脳皮質に向かって伝達されます。その過程で音を構成する信号の性質は変形・加工され、皮質聴覚野で知覚され認識されます。このとき、音の大きさや高さなどは第一次聴覚野で認識されますが、それだけでは「音楽を聞く」ことにはなりません。リズムやピッチ、音色やメロディーなどを認識するにはより高度な脳の機能が必要で、聴覚野のニューロンの興奮が大脳皮質の他の領域に伝えられ、情報処理されたうえで、側頭葉にある聴覚連合野に送られて、音楽として認識されるのです。ですから、事前に「音楽を聴く」ことは脳全体を活性化し、そのことにより、空間認識問題が解決しやすくなったと考えられます。

 ただし、音楽はモーツァルトである必要はなく、楽しめる音楽なら何でも良いという意見もあります。ちなみに、さまざまな実験から胎児に音楽は伝わっているといわれますが、胎児がそれを楽しんでいるかどうかはわかりません。

(弘邦医院・林雅之院長)

2 / 2 ページ

関連記事