上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

療養中に下肢でつくられた血栓が動脈に詰まり手術で取り除くケースも

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 そのため、近年は手術後の肺血栓塞栓症の予防措置として、「フロートロン」という医療機器を使って管理するケースが増えています。患者さんの足にサポーターを巻いて30分ごとに空気圧で圧迫し、静脈の血行を促進して血栓がつくられにくくするのです。

 また、以前に脳・心臓の血管に血栓が詰まる脳梗塞・心筋梗塞の既往がある、血液をサラサラにする抗血小板薬や抗凝固薬を飲んでいる、狭窄した動脈を広げるためにステント(金属製の筒状の網)を血管内に留置している、といった血栓が生じるリスクが高い人たちでは、血液を固まりにくくするヘパリンという薬を点滴で投与する予防措置が行われます。

 さらに、手術後はできる限り早い時期にベッドから起き上がり、リハビリなどの活動を始める「早期離床」を推奨する施設も増えています。

 せっかく手術を受けて病気を治療したのに、入院や療養中に肺血栓塞栓症を起こして命を失うようなことになれば本末転倒です。ですから、医療機関では血栓形成を防ぐために、さまざまな方策が実施されているのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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