Dr.中川 がんサバイバーの知恵

歌手の杉田あきひろさんは「顎の骨が露出」 がん治療前は口腔ケアが重要

杉田あきひろさん(C)日刊ゲンダイ

 日本口腔外科学会が全国調査を行ったところ、2016年は4797件で12年と比べて19倍に急増していたのです。杉田さんのようなケースは人ごとではなく、その対策を頭に入れておくことが大切でしょう。

 喉頭がんや咽頭がんで手術をすると、声帯も切除して声を失うリスクがあります。その声を守るための治療が、放射線と抗がん剤を同時に行う化学放射線療法です。

 抗がん剤も放射線も、顎骨壊死を起こす恐れがあり、さらに骨粗しょう症やがんの骨転移に使用されるビスフォスフォネート系薬剤でも顎骨壊死を生じることがありますが、それらの治療に加えて歯科的要因が重なるとより顎骨壊死を起こしやすくなります。

 放射線の治療前に抜歯をすると、顎骨壊死の発生率は10%以下ですが、照射後に抜歯をすると、30%以上に上昇。なぜかというと、口の中の衛生状態と関係しているのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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