上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

AIによる診断と治療はいずれ人間の医師を超えるだろう

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 AIの画像診断によって胎児の先天性心疾患を出生前に見つける胎児心臓超音波スクリーニングシステム、心筋梗塞や狭心症を引き起こす冠動脈の詰まりをAIで診断するシステム、AIによる心電図解析でさまざまな心臓疾患を早期に発見するシステムなどが開発されました。順天堂医院でも、CT画像やバイオマーカーなどの情報を落とし込んだAIによる心房細動の再発予測の研究が進んでいます。

 プラークの破裂によって形成される血栓の除去に関してもAIを利用した治療が脳外科の分野で登場しています。例えば脳の血管に血栓が詰まって起こる脳梗塞に対しては、脳外科医がカテーテルを用いて血栓を吸引する治療が行われていますが、その処置をAIの支援によってある程度まで自動化するシステムの開発が進んでいます。

 血管やプラーク=血栓の状態をAIが判断し、最適な機器や方法を選択したり、医師が行う処置を補助します。病変を間違いなく同定するための診断AIと、治療を確実に進めるための支援AIの両方を使い分け、医療が実施される時代になっているのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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