がんと向き合い生きていく

コーヒーとがんの関係…抗がん剤の効果を高めるとの研究も

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ずいぶん前のことですが、カフェインが抗がん剤の効果を増強させるのではないか、マウスを用いてがんに対するその効果についての実験を行ったことがありました。結果は、そのような傾向はみられたのですが、臨床的研究までは進めませんでした。

 抗がん剤はがん細胞の遺伝子を損傷させ、がん細胞にダメージを与えますが、DNAを修復させて生き延びる細胞もあるわけです。カフェインはそのDNA修復を阻害し、抗がん剤の効果を高めるのではないか、というのがその理屈です。

 コーヒー以外の飲み物でも、がんのリスクが減るといわれたことがありました。1970年ごろ、「紅茶きのこががんに効く」というブームがあったのです。当時、近所に住んでいた叔母さんが、よくこの話をしていたのを思い出します。しかし、明らかな科学的根拠はなく、たちまち茶の間の話題から消えました。最近は、科学的根拠が重視されるようになったためか、この手のブームはなくなったようです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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