老親・家族 在宅での看取り方

夫婦ともに認知症で夫に先立たれた妻「パパのところに行けるわ」と眠るように…

写真はイメージ

「弟が明日会いに来る予定です。今日の方がいいですか?」(娘さん)

「早い方がいいかもしれません」(私)

「連絡を取ります」(娘さん)

 お風呂に入ったばかりで、さっぱりした、穏やかな表情の奥さま。

「もうそろそろかと、覚悟してます」(娘さん)

「徐々に呼吸が弱くなったり、呼吸の仕方に変化が表れてくると思います。苦しそうに見えるかもしれませんが、ご本人は苦しくないので、話しかけたり、手を握ったり、いつものように過ごしてください。そうなったら、まずは当院にご連絡くださいね」(私)

 翌日、奥さまはゆっくりと目を開け、「パパのところに行けるわね」とお話しし、眠るように旅立たれていかれました。

 このご家族が、大事な時間を最愛の自宅で過ごすお手伝いができた──。診療チームの一員であったことを本当によかったと感じたのでした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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