老親・家族 在宅での看取り方

夫婦ともに認知症で夫に先立たれた妻「パパのところに行けるわ」と眠るように…

写真はイメージ

 先週からの続きです。

 ともに認知症ながら、2人暮らしの90代のご夫婦。冬の朝、旦那さんが玄関先で倒れているのが発見されました。

 幸いなことに旦那さんは一命を取り留めましたが、入院中の安静生活で歩行困難に。

 それまでは、足の悪い奥さまを手伝って家事をこなしたり、買い物に付き合ったりしていた旦那さん。退院後はそれらができなくなりました。食も細くなり、ご家族と相談の上、点滴をしながら経過観察に。しかし、梅雨入りした頃に旅立たれていかれました。

 ほとんど話せない状況ながらも、最期のその瞬間まで奥さまのことを気遣っておられました。「パパー、いかないでー。悲しいよう」と奥さまが泣かれていたのが印象的でした。付き添っていた私たちスタッフも思わずもらい泣きをしていたのを覚えております。

 2人は20代の頃、勤め先で知り合い、当時としては珍しい恋愛結婚で結ばれたそうです。この住まいで子育てをし、お子さんが巣立ってからも仲むつまじく過ごされていました。お2人の希望は、思い出が詰まったこの場所で最期の時を迎えたいということ。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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