老親・家族 在宅での看取り方

在宅医療では「心」の環境調整が大事…可能であれば離れて暮らす家族も交えて

患者さん、ご家族とがお互い率直に話し合って療養環境をつくる

 さてこの「環境調整」には、ベッドやトイレといった介護のための器具などの準備の他にも心の準備もあると考えます。

 在宅での療養にはもちろんマニュアルもなければ、決まったスタイルもありません。患者さんご本人と家族それぞれに療養のやり方があり、それぞれの不安や疑問、将来の目標といったものもさまざまです。あまり形式にこだわることなく、できれば在宅医療を開始される前に患者さんとご家族の間で、事前の話し合いをしていただくことは大切な「環境調整」といえるわけです。

 それは在宅医療を行うために、患者さんご本人とご家族の希望や願いを、最後に私たちも共有することが必要となるからです。

 つい長年一緒に暮らして気心知れたご家族だから、言わなくてもお互いわかると考えがちとなり、いざ在宅医療をスタートさせてから、ご家族と患者さんとの思いのズレにあつれきが生じ、悩まれるといったことは珍しくありません。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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