上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「孤独」が心臓病のリスクをアップさせるのはどうしてなのか

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 コルチゾールも血管を収縮させるうえに血中ナトリウムを増加させるので血圧が上がります。また、コルチゾール濃度が上がると血糖値やコレステロールの数値が高くなります。ストレスは、高血圧、高血糖、高コレステロールという心臓病の代表的なリスク因子を揃える原因になり、心臓にとっては大敵となるのです。

 また、孤独を感じることが多い1人暮らしの人は、食生活が乱れて栄養が偏ったり、運動不足になりがちです。さらに、なかなか寝付けない、熟睡できないといった睡眠トラブルも起こしやすくなります。睡眠が不足すると交感神経が優位になるので、さらなる悪循環を招きます。

■高齢になるほど悪影響を受ける

 どんな場面で孤独感、ストレスを感じるかは人それぞれですが、一般的な目安となる指標があります。ストレスの種類と大きさを数値化して分類した「ホームズ・ラーエのストレス指標」が有名で、それによると、「配偶者の死」がストレス強度100で最大とされています。続いて離婚や別居などが上位になっていることから、近しい人たちとの別れは強い孤独を感じ、大きなストレスを受けるといえるでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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