医療だけでは幸せになれない

なぜ、感染症と高血圧の治療効果を同一に語ってはいけないのか

渋谷のスクランブル交差点を行き交う人たち(C)共同通信社

 さらにこの先には別の大きな問題がある。国が義務化も推奨もしないといっても、マスクをするのも、ワクチンを打つのも個人である。その個人個人が、マスクをする/しない、ワクチンを打つ/打たないという判断をしなければならない。その判断を個人個人がするのはむつかしい。そこで強制力を持って義務化する、さらには罰則規定を設けるということも行われる。これは降圧薬では決してないことだ。

 だからこそ、医療については考え続けることが重要なのである。そのために必要なリテラシー(情報を適切に理解して活用すること)やリテラシーを超えて垂れ流される膨大な情報、実際になされる国の判断、個人の対応などについて引き続き考えていきたい。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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