Dr.中川 がんサバイバーの知恵

高嶺ふぶきさんは舞台復帰へ…甲状腺がん「低リスク」以下は経過観察が中心

(本人のインスタから=左から2人目)

「超低リスク」は進行が遅く生命を危ぶむ恐れが少ないため、ガイドラインでも治療しない経過観察が推奨されます。「低リスク」は甲状腺半分の切除ですが、私が若い方からセカンドオピニオンを求められたら、「超低リスク」同様に経過観察を勧めることは少なくありません。

 その根拠が甲状腺専門の隈病院のデータです。甲状腺乳頭がんのうち1センチ以下の微小がんと診断された2153人を、すぐ手術を受けた974人と経過観察した1179人に分けて追跡。その結果、どちらも甲状腺がんで亡くなったケースはゼロでした。

 経過観察グループのうち、10年間でサイズが3ミリ以上増大したのは8%で、リンパ節転移は3.8%。微小で悪化を示すようなケースは、その時点で手術をすれば、再発はないのです。若い女性は、自然に消えることもあります。「低リスク」は10年生存率が99%と、まず悪さをしません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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