Dr.中川 がんサバイバーの知恵

高嶺ふぶきさんは舞台復帰へ…甲状腺がん「低リスク」以下は経過観察が中心

(本人のインスタから=左から2人目)

 甲状腺の乳頭がんで手術が必要なのは、「中リスク」以上で、再発を繰り返したり、より悪性度の高いタイプに変化したりするケースです。

 乳頭がんとは別に、未分化もあります。甲状腺がん全体のわずか1%ですが、とても進行が速く、1年生存するのもわずか。がん専門医の私も、「最悪のがん」として、すい臓がんと並んで恐れているほどです。

 実は乳頭がんが長い時間をかけて厄介な未分化がんに転化することもあります。60歳以上に多く、乳頭がんも高齢で発症するほど悪性度が高い傾向もあり、リスク分類を踏まえて、高齢発症ではすぐに手術することもあります。高嶺さんがすぐ手術をされたのは、50代発症の年齢を考慮されたのかもしれません。

 ちなみに悪性の未分化がんになる前の段階で手術をすれば治る可能性が高いので、経過観察はとても重要です。

 甲状腺は、成長や代謝にかかわる重要なホルモンを分泌。全摘ではもちろん、半分切除でも、ホルモン剤が生涯必要に。手術では、発声に関わる神経が損傷されるため、生活の質を考えると、「低リスク」以下は経過観察が重視されます。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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