感染症別 正しいクスリの使い方

【抗菌薬の長期投与】耐性菌だけでなく副作用や体内蓄積にも注意が必要

一部の感染症では抗菌薬の長期投与が必要(C)日刊ゲンダイ

 ただ抗菌薬の長期投与は、耐性菌発生の観点以外にも注意点が多く出てきます。たとえば、感染性心内膜炎の原因菌のひとつとして知られている「MRSA」(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)です。MRSAの治療薬であるリネゾリドは投与期間が2週間を超えると血小板減少など血球系の副作用を起こしやすくなるのです。このため感染性心内膜炎の第1選択薬としては推奨されていません。

 また、ST合剤という抗菌薬は、血中のカリウムの濃度が上がってしまう高カリウム血症や血球減少などの副作用が知られていて、長期投与される際には血液検査を頻回に行うなど、より注意しています。

 抗菌薬を長期投与する際は副作用だけでなく、腎機能が弱っている患者さんでは抗菌薬の体内蓄積などにも注意します。

 特定の医薬品については薬物の血中濃度を測定し、適切な濃度であるか薬剤師がモニタリングすること=TDMも多くあります。TDMとは「Therapeutic Drug Monitoring」の略で、薬物血中濃度モニタリングのことを表しています。

 次回、詳しく説明したいと思います。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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