老親・家族 在宅での看取り方

起きたら冷たくなっていて…母の死を確認したのは高校生の娘だった

写真はイメージ

 その患者さんは、旦那さん、大学生と高校生の2人の娘さんとの4人暮らしでした。50代という若さでしたが、卵巣がんの末期。予後が限られているということもあり、今後どのように過ごしていくかという話は避けて通れません。

 在宅医療を始めるにあたり、患者さんやご家族の意向を伺うべく、病状についての詳しい説明から始めました。すると、患者さんもご家族も言葉を失ってしまったのです。しばらくして患者さんの口から漏れた言葉は、「私、そんな悪い状況なんですか……。来月、娘の高校の保護者会があるんです。出席すると返事しているのに」というものでした。

 入院していた病院で「卵巣がんの末期」という診断は受けていたものの、インフォームドコンセントがしっかりなされていなかった。インフォームドコンセントは、医師や看護師から行われる医療行為に対する十分な説明のこと。患者さんやご家族はその内容について十分納得した上で治療を開始するのですが、この患者さんの場合、「最期」まではまだ少し余裕があると思われていたのでした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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