医療だけでは幸せになれない

インフルとコロナ感染拡大…学校関係者はマスクに関する科学的研究成果を知るべきだ

コホート研究では学校での着用は「効果あり」(C)PIXTA

 逆に「ワクチンを打っていればマスクは必要ない」と結論するにも問題がある。この研究はオミクロン出現以前の検討であり、オミクロン出現以降、重症化予防効果は比較的維持されるにも関わらず、感染そのものに対する予防効果は時間経過ともに減弱し、この研究結果がオミクロン以降も適用できるかについてはむしろ疑問が残る。

 前回紹介した前後比較の研究同様、今回のコホート研究においても、学校でのマスク着用は「効果あり」という結果である。ただバアアスの可能性は残るが、結果を覆すような決定的なバイアスの可能性があるかと言われれば、その可能性は低いかもしれない。日本の状況を見ても、マスク着用が学校で言われなくなって、コロナとインフルエンザの感染が拡大しているという事実もある。

 さてそこでどうするか、である。このような研究がまず学校関係者に知らされているかどうかであるが、どうであろうか。マスクを外してほしいという周囲からの要望に対して、こうした研究結果は、案外学校側には届いていないかもしれない。まずはこの研究結果を学校関係者に届ける必要がある。内閣感染症危機管理統括庁がその任務を負うのだろうか。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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