引き続き、研究結果と個人のギャップについて取り上げていこう。マスクの問題に戻れば、「マスクが感染予防に有効」という論文であっても、その実情は、マスクを着けて感染しなかった人、マスクを着けずに感染した人だけではなく、マスクを着けたにもかかわらず感染した人、マスクを着けなくても感染しなかった人が必ず含まれる。
個人個人の経験に基づくならば、マスクを着けていても感染した人や、マスクを着けずに感染しなかった人は、マスクに意味はないと考えるのが普通だろう。さらにはこれだけみんながマスクを着けていても流行が収まらないという現実を見れば、「マスクは無意味」と考えるのが正しいように思えるだろう。そして、それはある意味正しい。
臨床試験では、マスクをする人としない人を比べるのだが、それはあくまで研究の枠組みの中でのことに過ぎない。現実にはマスクをした生活、しない生活という、いずれかの生活があるだけだ。個人個人がその2つを比較することは困難だ。
医療だけでは幸せになれない