さて、認知症の連載で、なぜここまで脂質異常症の話をするのか。それは、脂質異常症が認知症の発症に関与するとみられているからです。
そもそも脂質異常症は前述の通り脳卒中の危険因子で、血管性認知症のリスクを高めます。さらにはアルツハイマー型認知症の関連も報告されています。脂質異常症の中でも、高LDLコレステロールと低HDLコレステロールがアルツハイマー病の発症リスクに影響を与えるとされています。
ただ、脂質異常症がアルツハイマーの発症を抑制するとの報告もあるんですね。「脂質異常症=アルツハイマーの危険因子」とする一定の見解はまだ得られていない状況ですが、血管性認知症との関係は明らかなわけですから、「認知症の発症前に対策を講じよう」と常から言っている私としては、コレステロールが高ければ、速やかに生活の改善、必要に応じての薬の治療を開始してほしい。
第一人者が教える 認知症のすべて