第一人者が教える 認知症のすべて

低血糖症を起こしたことがある人は認知症発症リスクが2倍になる

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「糖尿病と認知症」では、低血糖の危険性も知っておかなければなりません。

 糖尿病の薬のうち、インスリンやスルホニル尿素(SU)薬などは低血糖を起こしやすいのですが、これらを使用している人で高齢者ほど、低血糖の頻度が指数関数的に増加することが指摘されています。“指数関数的に”とは、値が大きくなるにつれて量が急激に増える状態のこと。

 こんな報告があります。70~79歳の糖尿病患者さん783例を対象に12年間追跡調査をしたところ、低血糖の既往があった人は、なかった人と比べて2.1倍、認知症の発症リスクが高かったというのです。

 また、複数の研究結果を総合し、高い見地から解析する統計手法(メタアナリシス)では、重症低血糖の発症は認知症発症リスクを1.68倍高めますが、一方で認知症があると重症低血糖のリスクも1.61倍になると示しています。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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