医療だけでは幸せになれない

いまだに学校の感染対策に医学研究の成果が考慮されないのはなぜか

医学研究の結果が反映されていないのか(C)PIXTA

 大枠は、学校教育活動において児童生徒及び教職員に対して「マスクの着用を求めないことが基本となります」ということである。ここでは、医学研究の結果が反映されていないように思われる。あるいは医学研究の結果はあいまいで、効果がはっきりしていないと判断されたのかもしれない。また、マスクの効果があるとしても、害の方が上回るという判断だったのかもしれない。管轄が文部科学省だということが影響していると思われるが、作成者のメンバーについての記載はなく、厚生労働省や医学関係者が関わったかどうかも不明である。

■学校教育において感染対策に関する医学研究は重要なもの

 少なくとも、この連載で解説した介入前後研究(注1)やコホート研究(注2)で示されたマスク着用の効果については情報提供されている必要があるのではないか。マスクの着用を勧めるにしろ勧めないにしろ、判断に関わる一要素として、これらの研究を学校関係者も知なければいけないのではないか。学校ではまだそのような認識が薄い。そもそも専門家からの医学研究の結果の提供を必要としていないというのが現状だろう。30年以上前の日本の医療界と同じような状態である。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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