医療だけでは幸せになれない

いまだに学校の感染対策に医学研究の成果が考慮されないのはなぜか

医学研究の結果が反映されていないのか(C)PIXTA

 政府の委員として新型コロナ対策に当たってきた尾身茂氏のインタビューからなる「きしむ政治と科学:コロナ禍、尾身茂氏との対話」で、2020年2月の安倍政権下での学校の一斉休校について、尾身氏は何の相談もなかったと答えている。そこから3年たっても、学校における感染対策に対して医学研究が考慮されていない状況に大きな変化はない。学校教育において、健康と同程度かあるいはそれ以上に考慮すべき問題は多いだろう。しかしその中の1つの要素として、感染対策に関する医学研究は重要なものと同時に必須のものでもある。

 そうした中、EBM(注3)と同様「EBE:Evidence-Based Education」(注4)の動きも徐々に広がりつつある。コロナ感染に対する対応と同時にEBEに対する動きが広がることを期待している。ただその時にまず注意しておきたいことは、エビデンスだけで判断するということにならないように、あくまでエビデンスは多くの判断材料の1つに過ぎないということである。それは本連載の表題である「医療だけでは幸せになれない」ということの一部でもある。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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