医療だけでは幸せになれない

マスクを常に着用する場合の「害」の検討はなぜ難しいのか

写真はイメージ

■質の高い研究は少ない

 すると成人では、マスクによる身体的な悪化のリスクが高い呼吸器疾患や高血圧、心臓手術後の患者を含む27名の患者の小規模の研究ではあるが、マスク着用時と非着用時の酸素飽和度(注2)を比較した研究では、酸素濃度の低下は認められないことが示されている3)。

 また小児を含むシステマティックレビュー(注3)では主にN95マスク(注4)について検討されてており、以下の問題が指摘されている4)。
・不快感
・呼吸器疾患のある人、子供、高齢者、心臓病のある人の呼吸機能への影響
・皮膚疾患のある人の皮膚への刺激
・難聴のある人のコミュニケーションの問題
・マスクの再利用に関する問題
・集中力の問題、作業能力の低下、呼吸困難、メガネの曇り、顔認識の困難、精神症状

3 / 10 ページ

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

関連記事