医療だけでは幸せになれない

マスクを常に着用する場合の「害」の検討はなぜ難しいのか

写真はイメージ

・長時間使用した場合の頭痛

 また小児の心理的な問題についてのシステマティックレビュー5)では、不安やストレスのような心理的症状の増加を指摘する2研究、外国語教育における口頭発表の能力に差がないという研究が含まれるが、バイアス(注5)の影響が大きく十分な検討ができないという現状を報告している。

 「害」についての研究は「効果」の研究に比べて困難な場合が多い。医学的な害であっても、効果を検討したランダム比較試験(注6)やコホート研究(注7)では十分な検討が行われない場合も多く、さらには頻度の低い重大な副作用はそもそもその医療行為を実施した後でなければ検討不能である。

 その上に小児の心理社会的な影響となると研究自体の困難さも加わり、どうしても医学研究で明らかになるには多くの時間や複数の研究の積み重ねが必要になる。害を検討した研究がなかなか見つからない背景にはそういう問題がある。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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