医療だけでは幸せになれない

マスクを常に着用する場合の「害」の検討はなぜ難しいのか

写真はイメージ

 効果を示す医学研究ばかりが出版され、害の問題がはっきりしない複雑な中で、学校での感染対策をどうするか判断しなければならない現状は、医学研究を追加したとしても決して容易なものではない。マスク着用の害について明らかでない中で、重症化リスクの低い小児にマスクを着用させるかどうかと問題を絞ってみたところで、その困難はほとんど軽くはならないだろう。さらには小児と言えども、まれには重症化はあるし、症状が長引いたり、味覚障害が残るなどの後遺症の問題もあり、医学的な面だけを取り上げても、考慮すべきことが多くある。

 効果を重く見るか、害を重く見るか、そう単純化させないと判断ができないというのが現状かもしれない。そう考えれば、効果を示す多くの論文がいくらあったとしても、不確かな害の方を重く見て、「マスク着用を求めない」という判断もあながち悪くはないともいえる。

5 / 10 ページ

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

関連記事