がんと向き合い生きていく

「治った~」という掛け声とともに患者たちとの体操が始まった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 数年前、O君の要請でY市に講演に出かけた時のことです。O医院の近くのホテルに宿泊した私は、翌朝6時にはO医院に来るように言われましたが、10分ほど前に本人が迎えに来てくれました。早朝に合流した目的は朝の体操でした。

 O医院の2階は畳の部屋になっていて、すでにご近所の方と思われる30人ほどの老若男女が集まっていました。すぐにO君の掛け声で体操が始まります。そしてよくよく聞いてみると、「治った~」「治った~」という掛け声なのです。

 私は一緒に体操に従いましたが、「治った~」には驚きました。集まった方々から、O君はとても信頼されていると感じました。

■こころも体も考える「全人的医療」を実践

 畳の部屋には、帯津三敬病院の帯津良一先生が書かれた額があったと記憶しています。帯津先生は、駒込病院の食道外科で活躍された後、川越市で開業されました。病院勤務時代から、夕方になると道着に着替え、数人で太極拳の訓練をされていました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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