がんと向き合い生きていく

人生初の海外学会だったボリビアでただただ白い湖に案内された

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ずいぶん前、30年ほど前のことですが、ある大学の某教授から次のような依頼の電話がありました。

「ボリビア外科学会から特別講演を頼まれたのだけれど、他の学会と重なって自分は行けなくなってしまいました。君が行ってくれませんか? いま君が行っている研究を英語で話してくれれば大丈夫です。招待だから滞在費は向こうの学会が払ってくれます。ただ、旅費は自腹なので80万円ほどかかります。がんセンターの○○先生も同行します」

 当時、私はまだ海外の学会に出席したことがありませんでした。それでも○○先生も一緒ならと思い、またボリビアとはどんな国なのか、ぜひ行ってみたいと思いました。○○先生は以前、同じ内科で3年間ほど一緒に働いたことがありました。

 旅費のこともあり、家内の許しを得てから出席を承諾しました。スペイン語はできないので、英語での講演を準備します。講演内容は「大腸がん化学療法の基礎的研究と臨床成績」としました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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