第一人者が教える 認知症のすべて

酔っぱらって転倒…「異常」はすぐに出てくるとは限らない

ここ数ヵ月で頭を打ったことがあるかどうかも重要(C)iStock
「ぼーっとする」症状が出てきたら、過去数カ月の行動を確認

 高齢者では足腰が弱く、視力やバランス感覚が衰えているため、転倒しやすい。また、降圧薬や睡眠薬、認知症薬、精神安定剤など服用している薬によっても、転倒しやすくなります。そのため、慢性硬膜下血腫は高齢者によく見られます。

 その場合、「ぼーっとする」「物忘れがひどい」といった症状から、認知症と誤診されることも……。高齢者で認知症を疑う症状が出てきた場合、過去数カ月の間に転倒したことがないか、しっかり確認する必要があります。慢性硬膜下血腫であれば、治療によって、認知症のような症状はなくなります。

 頭を打つことは、認知症のリスク上昇にもつながりかねません。米国とデンマークの研究グループが、「外傷で脳に損傷を負ったことのある人は、ない人に比べて認知症になるリスクが高くなる」ことを示した大規模研究の結果を、2018年、医学雑誌「Lancet Psychiatry」で発表しています。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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