第一人者が教える 認知症のすべて

酔っぱらって転倒…「異常」はすぐに出てくるとは限らない

写真はイメージ(C)PIXTA

 今年も残すところ1カ月と少しになりました。コロナで忘年会をここ数年自粛していた方も、今年はかつてと同じように、と計画しているかもしれませんね。

 大人ですから、お酒を飲んでもタガを外さず楽しんで欲しいですが、なかなかそうはいかないのがアルコールの恐ろしいところ。酔っぱらった時、気をつけていただきたいことのひとつが、転倒です。

 転んで頭を打つ。そのまま意識を失ったり、出血、嘔吐などの症状が見られたら大抵の場合、速やかに救急車を呼ぶか、タクシーなどで病院へ駆け込むでしょう。

 しかし頭部を打った際、症状は必ずしもすぐに出るとは限りません。

「慢性硬膜下血腫」という病名を耳にしたことがありますか?

 頭は一番外側に頭蓋骨があり、その内側に硬膜→くも膜→軟膜と髄膜が3重になって、脳を守っています。慢性硬膜下血腫というのは頭を打った後、硬膜と脳の間に血液がたまり、血腫ができる病気です。血腫はじわじわ大きくなり、次第に脳を圧迫。だいたい1~2カ月くらい(もっとかかる場合もあります)で、さまざまな症状が出てきます。具体的には〈表〉で挙げたような症状になります。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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