第一人者が教える 認知症のすべて

酔っぱらって転倒…「異常」はすぐに出てくるとは限らない

ここ数ヵ月で頭を打ったことがあるかどうかも重要(C)iStock

 研究グループは、1995年1月1日時点でデンマークに住んでいたデンマーク人で、1999~2013年に50歳以上になった人をピックアップし、追跡調査をしました。対象は279万4852例で、平均追跡期間は9.89年。

 解析の結果、外傷性脳損傷歴のある群は、そうでない群に比べて、認知症のリスクが24%増加し、アルツハイマー病のリスクが16%増加したとのことです。認知症のリスクは、外傷性脳損傷後の最初の6カ月間が最も高く、外傷性脳損傷の回数が増えるほど認知症のリスクが上昇しました。

 また、20代で外傷性脳損傷を受けた人は受けなかった人に比べて30年後に認知症を発症するリスクが63%高く、30代で外傷性脳損傷を受けた人は受けなかった人に比べて30年後に認知症を発症するリスクは37%高いとの結果でした。

「頭を打った(ことがある)=認知症になる」わけではないものの、転倒を減らせるならそれに越したことはありません。転倒でひどく脳を損傷すれば、そのまま命を落とすリスクもあるのです。飲み会が増える季節、転ばない・転ばせない。これらをしっかり頭に入れておいていただきたい。

 なお、「頭を打っても、たんこぶができたら大丈夫」という考え方があると聞いたのですが、これは全く根拠のないことですから、くれぐれも信用しませんよう、お願いします。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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