第一人者が教える 認知症のすべて

1999年に若年性アルツハイマー病の専門外来を開いた理由

若年性アルツハイマー病の専門外来はほとんどない(C)日刊ゲンダイ

 私が若年性アルツハイマー病の専門外来を開いたのは1999年。前職場の順天堂大学医学部付属順天堂医院でのこと。

 認知症全般を診る「物忘れ外来」「認知症外来」「メモリークリニック」は、大学病院や総合病院、地域の診療所で設けるところが出てきていましたが、「若年性」に特化した外来はそれまで日本ではありませんでした。

 十数年経った今でもほとんどありません。現在、私が院長を務める「アルツクリニック東京」でも2019年4月に「若年性アルツハイマー病初診専門外来」を開設し、臨床心理士や看護師らとチームを組んで診療にあたっています。

 アルツハイマー病の発症に至る過程は、時に川の流れに例えられます。最初に、アミロイドβというタンパク質が蓄積。それがくっつき合ってアミロイド斑ができ、中枢神経細胞の中のタンパク質(タウタンパク質)が蓄積し、くっつき合う。それが作用して脳の神経細胞が死滅し、アルツハイマー病の症状が出てくる。アミロイドβの蓄積が“川上”で、そこから流れ流れて“川下”であるアルツハイマー病発症へとつながるのです。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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