第一人者が教える 認知症のすべて

「聞こえ」の悪さは、孤立・うつ病・認知症のリスクを高める

加齢による聴力の低下は高音域から始まる

 子どもたちが聞こえると言っている「20代」の音が、私には聞こえない──。2年前、こんなツイッター(現X)への投稿がきっかけで、一気に注目が集まったのが、「聞こえ」をチェックするパナソニックのウェブサイトです。

 だれしも加齢によって聴力が落ちます。そして加齢による聴力の低下は高音域から始まります。パナソニックのウェブサイトでは、1万9000ヘルツから1000ヘルツまでの10段階の高さの音がそれぞれボタンをクリックすると聞こえるようになっていて、最も高音域の1万9000ヘルツは「20代」、1万7000ヘルツは「30代」と、“耳年齢”の目安が記載されています。

「焦りました」と言うのは、49歳の女性。55歳のご主人と一緒に「20代」から順番にボタンを押していった。2人とも、20代、30代、40代と音はまったく聞こえず、「最初は、パソコンのスピーカー機能がオフになっていると思った」。ようやく「ピーピーピーピー」というモスキート音が聞こえてきたのは、「50代」のボタンを押した時。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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