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肩における「脂肪幹細胞移植」の効果はまだまだ未知数

写真はイメージ

 分裂して増殖する能力が高く、さまざまな細胞に“化ける”間葉系幹細胞。脂肪から採ったこの細胞を移植し、損傷した部位を治す「脂肪由来幹間葉系細胞移植」の可能性について、これまで述べてきました。今回は肩関節疾患においての臨床成績に関する研究を紹介します。

 とは言っても、歴史の浅い治療ということで、世に公表されている研究は数少なく、2つしかありません。

 ひとつはItroという研究者が、2022年、Pharmaceuticsという雑誌に報告したシステマチックレビューです。システマチックレビューとはデータの信頼性がある程度認められる、いくつかの研究を系統だてて(条件をできるだけ同じにして)検討する論文形態です。

 Itroらはいくつかの論文データを検討して、肩腱板炎や腱板不全断裂で、間葉系細胞移植をすると、疼痛スコアの改善、超音波、MRIによる画像検査いずれにおいても、腱板治癒が促進されたという内容です。

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森大祐

森大祐

整形外科全般診療に長年携わる。米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を行い、2000例超の肩関節手術を経験。現在は京都下鴨病院で肩関節や肘関節、スポーツ障害患者に診療を行う。サイトで整形外科疾患の情報を発信。

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