「マンガ ぼけ日和」著者の矢部太郎さん「印象に残ったのは認知症が老化の一環であるということ」

「マンガ ぼけ日和」より
漫画を入り口に認知症のことを知っていってもらえれば

 ──漫画にすることで、意識したのは。

「漫画の本質は省略なんだ、どれだけ省略できるかが漫画なんだ。そう考え、何度も何度も描いて、文字数を減らしていきました。医療系の漫画って、情報量が多くて、編集の方の意向もあって文字情報を落とせない場合もあるようですが、長谷川先生も編集者も全て僕に任せてくれたので、イメージしているものになったと考えています。一冊で全てを伝えなくてはならないとは思っておらず、この漫画を入り口として、なだらかに認知症のことを知っていってもらえれば……」

 ──原作もそうですが、認知症の進み方を「春夏秋冬」に例えて表現しており、「冬」の看取りの部分で終わっている。原作にある「ほどほどで十分です」というセリフで締めくくられています。

「認知症になると、すぐに何もわからなくなるという印象があると思うんです。しかし、長谷川先生の本を読んでいるとそうではないことがわかります。ゆっくりと症状が進行し、まるで春夏秋冬のように、変化していく。母もよく言っているのは、介護は大変なもので、誰かの手に頼った方がいい。家族だから介護をしなければならない、ではない。母と長谷川先生の話には共通している部分があり、それは、『状況が許すならプロに任せる。ほどほどで十分』ということ。それを生かしたいと思いました。高齢化社会の中で、みんなが長生きするから認知症になる。しかし、認知症のことをみんなわからないから不安になる。僕も、描いたことで終わりにしないで、今後も認知症のことを考えていかないといけないな、と思っています」

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