医者も知らない医学の新常識

「歯磨き」は肺炎をどれだけ予防できるのか? 米国の内科医学誌で報告

写真はイメージ

 がんや心臓病などに次いで、特に高齢者の死亡原因として重要なのが「肺炎」です。肺炎になると、通常の場合、抗菌剤(抗生物質)が使用されますが、細菌性の肺炎以外には効果がありませんし、抗菌剤が効きにくい耐性菌が増加している、という問題もあります。それでは、肺炎の有効な予防法はないのでしょうか?

 肺炎は口の中の衛生状態と関連が深いと考えられています。唾液の分泌が低下すると免疫状態も低下し、口内炎や歯槽膿漏などの細菌感染症の誘因となります。それが誤嚥などを介して肺炎につながるのです。

 それでは、常に口の中を健康に保つことにより、肺炎は予防可能なのでしょうか? 抗菌作用のある洗浄剤を使用した研究などもありますが、あまり明確な予防効果は確認されていません。

 昨年の米国医師会関連の内科の医学誌に、シンプルな歯磨きの肺炎予防効果を検証した論文が掲載されています。入院中の患者を対象とした、これまでの15の臨床試験データをまとめて解析したところ、毎日歯磨きを行うと、行わない場合と比較して、院内肺炎のリスクが約3分の1有意に低下し、集中治療室における死亡のリスクも約2割低下していたのです。この予防効果は、特に人工呼吸器を装着しているような、重症の患者で強く認められました。

 歯磨きは簡単な肺炎予防法として、意外に有効な方法であるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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