老親・家族 在宅での看取り方

認知症の母を可能な限り自宅で過ごさせてあげたいと思っていたけれど…

患者さんが安心して療養できる態勢の構築が必要

「食べられなくなった時にどういう選択をするか、お考えはありますか」(私)

「胃ろうをつけるかとかですよね。そこが難しいですよね」(息子)

「正解はないから、本人家族の意向が最優先かなと」(私)

「父の時は、がんが余命宣告されていて、先がある程度予想できたので在宅で看取るにはわかりやすかったんですよ。でも、母は生きる意欲が強い人なので、できるだけ長く生きられるよう胃ろうをつなげたいです」(娘)

「可哀想だね……」(息子)

「そうだけど、お母さんだったら胃ろうを選択すると思うんだ。可能な限り、お母さんを自宅で過ごさせてあげようよ」(娘)

 女性はたびたび容体を崩し、ご家族は必死で介護にあたっていました。そんなある日、差し迫った様子の連絡をいただきました。

2 / 3 ページ

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

関連記事