老親・家族 在宅での看取り方

「元気だから放っておいて!」と主張する91歳女性に提案した案は…

患者さんの思いには可能な限り配慮する

 近ごろコロナ禍を境にして社会の仕組みや日本人の意識が少しずつ変化してきていると感じるようになりました。中でもアマゾンやウーバーイーツなど、自宅にいながら衣食住に関するサービスを受けるというライフスタイルはかなり浸透したのではないでしょうか。

 そのせいか医師が家に訪問するという私たちのような在宅医療への理解も、以前よりも進んだのではないかと思っています。それでも他人を家に上げることに抵抗がある患者さんは確実にいらっしゃいます。

 91歳の女性患者さんは1人暮らし。弁膜症に加え、腹部と胸部に大動脈瘤があり、そのうえ認知症も患っていました。ある日ご自宅で転倒し救急搬送され短期の入院。その後、当院が介入することとなりました。当初から私たちの診療所に通いたいとの相談があり、ご本人を交えての担当者会議が開催されました。

「私こんなに元気だから通いますよ。まだやることいっぱいありますし、皆さんに来てもらうのが申し訳ないくらい元気なの。こうやって皆さんに来てもらうのは嫌なの!」(本人)

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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