老親・家族 在宅での看取り方

認知症の母を可能な限り自宅で過ごさせてあげたいと思っていたけれど…

患者さんが安心して療養できる態勢の構築が必要

 ご主人を在宅で看取った経験がある95歳の女性。認知症を患っており、さらに胃がんの末期。「母は最期まで自宅で過ごすことを希望するだろう」と、息子さん、娘さんが在宅医療を選択されました。

「ご加減いかがですか」(私)

「ベッドで本を読みながら寝ちゃいますね」(息子)

「どんな本を読まれるんですか?」(私)

「純文学。古典も現在のものも」(本人)

「SFも90冊近く読んでいましたが、最近はそこまで読まなくなったかな。白内障もあるんですけど、本が読めなくなってからでいいと、手術を受けてくれないんですよ」(息子)

「もういいのよ~。本に囲まれて逝けたらいいなぁ、なんて」(本人)

 当院が介入してから5年。腹痛や嘔吐を繰り返し、せん妄の症状も現れるようになった時、ご家族の本音を伺ったことがありました。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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