老親・家族 在宅での看取り方

認知症の母を可能な限り自宅で過ごさせてあげたいと思っていたけれど…

患者さんが安心して療養できる態勢の構築が必要

「急ぎで先生に連絡をとりたいんです。昨日よく眠れるって座薬を入れていただいたんですが、そのあと夕方から今朝まで一切起きなくて! むくんじゃって、無呼吸もあって!」(娘)

「以前入院してる時に同じような症状があって、利尿剤で回復したんです! 今回もそうなるんじゃないか、と。ただ僕たち、もう不安で、家で見るのは難しいかもしれない。とにかく今は病院に入れてもらいたい。救急車、呼びます!」(息子)

 ご家族の強い希望で救急搬送へ。その後、入院中にご逝去されました。家で看取る覚悟をしていても、日に日に衰弱していくご家族の様子を目の当たりにすると心は揺れ動きます。このまま在宅でいいのか、入院したら何か別の手だてがあるんじゃないか──。

 どちらが正しいという問題ではありません。私たちの立場としては、自宅で穏やかに逝きたいという本人の希望ファーストでいきたい。患者さんが安心して療養できる態勢を構築し、最期まで伴走できるよう、これからも切磋琢磨してまいります。

3 / 3 ページ

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

関連記事