第一人者が教える 認知症のすべて

認知症における「肥満パラドックス」は遺伝子の型で異なる

カギはアポリポタンパクE(C)日刊ゲンダイ

 では、E4型保因者では? 80歳以下では、肥満だろうとそうでなかろうと、認知機能の低下度には有意差がなし。認知症の発症においては、E4型保因者では肥満が発症を顕著に抑制しているとの結果。記憶力においても、E4型保因者では肥満の人が有意に低下度が少なかったのです。また、アルツハイマー病の原因物質であるタウの蓄積の程度は、肥満者でない人の方が有意差を持って上回りました(表参照)。

 この研究から読み取れるのは、次の内容になります。
・アポEのうち、E2型保因者は遺伝子的にはアルツハイマー病になりにくいが、肥満があると加齢でリスクが高くなる微小梗塞を起こしやすく、認知機能が低下しやすい(=加齢による認知機能低下が、肥満で促進される)
・E4型は強力なアルツハイマー病リスク遺伝子で、保因者はアルツハイマー病になりやすいが、肥満があると認知症の発症は抑制される(=病的な認知症発症は、肥満で抑制される)

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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