第一人者が教える 認知症のすべて

中年期の肥満はアルツハイマー型認知症のリスクを3倍上げる

「肥満」と「肥満症」は区別

「肥満」と「肥満症」。この2つは、現在、区別して捉えられています。

 肥満は太っている状態を示す言葉。一方、肥満症は治療の対象となる「病気」。だから「肥満“症”」という名称になっているのです。

「肥満症」という概念が提唱されたのは、2004年のことです。日本肥満学会が世界で初めてその言葉を打ち出しました。同学会は06年に治療ガイドラインを、11年に診断基準を発表。また昨年末には、6年ぶりとなる診療ガイドラインの改訂版を発表しています。

 肥満というと、「食欲を節制できないからだ」「怠惰な生活だからだ」など、自己責任に起因するものとみなしがち。しかし実際は、社会や環境による要因、遺伝因子による個人差などで肥満は起こるもので、自己責任に起因するものではないとされています。

 だからといって、肥満で健康障害が生じている、またはそのリスクが高くなっているようであれば、医療的観点から治療が必要です。

 その対象となる肥満症と診断されるには、まずはBMI25以上の肥満であること。次に、「肥満による11種の健康障害(2型糖尿病、脂質異常症、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、運動器疾患など)のどれか1つ以上に当てはまる」あるいは「内臓脂肪型肥満」のどちらかであること。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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