第一人者が教える 認知症のすべて

料理も掃除も洗濯もしてもらえて生活は楽になったけど…

施設を訪ねると無表情なK子さんが…(写真はイメージ)

 今年50歳になる女性は関西出身。大学生の時、阪神・淡路大震災を経験しました。

 震災後すぐに神戸に行き、1人暮らしの高齢者のお宅に必要な物資を運ぶボランティアグループに所属。そのグループが縮小した後も、高齢者を訪問し、話し相手をする活動を続けていたそうです。

 その中で気が合い、とても親しくなったのが、当時78歳だったK子さん。震災のずいぶん前にダンナさんを亡くしており、子供もいませんでしたが、明るい性格でお友達がたくさんいました。洗濯物を干しっぱなしにしていたら、具合が悪くて寝ているんじゃないかと、近所の人が心配してのぞいてくれるほどです。

 変形性股関節症を患い、歩く時は手押し車(高齢者用の乳母車のようなカート)を使いつつも、毎朝買い物に行き、夕方には銭湯、月1回は白髪染めとカットで美容院へ。女性はK子さんに料理を教えてもらい、温泉旅行も一緒に出かけたそうです。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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