一方で、血中濃度が中毒域に達してしまうと「第8脳神経障害」といって耳が聞こえなくなる副作用が起こる可能性があります。もちろん他の副作用(腎機能障害など)が発生するリスクも高くなるわけですが、この第8脳神経障害は一度起こると元に戻らないとされているため、絶対に避けなければなりません。そのために必ずTDMが行われるのです。
TDMを行うには採血をする必要があり、対象となるクスリのほとんどは血中濃度が一番低くなるタイミング(クスリの投与直前)で採血し、血中濃度が測定されます。この濃度をわれわれは「トラフ値」と呼んでいます。トラフ値が高ければ、そのクスリの血中濃度がずっと高い状態に体がさらされているということになり、これは副作用のリスクが高くなるということと同じ意味になります。特にTDMが必要となるクスリの使い始めの頃は、頻回に血中濃度を確認しなければなりません。その後、血中濃度がある程度、有効域内で安定していることが確認できれば、TDMの回数は少なくなっていきます。
高齢者の正しいクスリとの付き合い方