高齢者の正しいクスリとの付き合い方

採血による厳格なモニタリング「TDM」が必要なクスリもある

TDMを行うには採血をする必要がある

 一方で、血中濃度が中毒域に達してしまうと「第8脳神経障害」といって耳が聞こえなくなる副作用が起こる可能性があります。もちろん他の副作用(腎機能障害など)が発生するリスクも高くなるわけですが、この第8脳神経障害は一度起こると元に戻らないとされているため、絶対に避けなければなりません。そのために必ずTDMが行われるのです。

 TDMを行うには採血をする必要があり、対象となるクスリのほとんどは血中濃度が一番低くなるタイミング(クスリの投与直前)で採血し、血中濃度が測定されます。この濃度をわれわれは「トラフ値」と呼んでいます。トラフ値が高ければ、そのクスリの血中濃度がずっと高い状態に体がさらされているということになり、これは副作用のリスクが高くなるということと同じ意味になります。特にTDMが必要となるクスリの使い始めの頃は、頻回に血中濃度を確認しなければなりません。その後、血中濃度がある程度、有効域内で安定していることが確認できれば、TDMの回数は少なくなっていきます。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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