上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「難聴」は動脈硬化性の心臓病とも深く関係している

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 このように難聴リスクを上げる糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病は、動脈硬化を促進させるため、冠動脈心疾患の代表的なリスク因子でもあります。つまり、難聴と心臓病はリスク因子が重なっているのです。

 また、難聴には全身の慢性炎症が関係しているのではないか、という見方があります。慢性炎症があると内耳にも炎症が波及し、だんだんと感音難聴が進行していくと考えられています。この慢性炎症は心臓病とも深く関わっていて、体内に慢性炎症があるとインターロイキン-6(IL-6)やTNF-αといった炎症性サイトカインが過剰に放出され、動脈硬化が進んで心臓病のリスクを上げることが知られています。ここでも、難聴と心臓病のリスク因子が重複しているのです。

 先ほど触れたスタチンは、体内でのコレステロール合成を抑制するという主作用に加え、抗炎症の作用も持っています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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