第一人者が教える 認知症のすべて

レビー小体型認知症は最初に幻視・妄想やパーキンソン症状が現れる

頭ごなしに否定しない
「玄関に知らない人が立っている」と言われたら、どうしたらいい?

 幻視・妄想は、ご本人もつらいですが、周囲の人もどう対応していいかわからず、戸惑ってしまいがちです。

 夫がレビー小体型認知症と診断された女性も、夫から「玄関に知らない人が立っている」「2階にだれかがいる」「壁をヘビが這っている」などと幾度となく言われました。

 最初のうちは「だれもいない」「ヘビのように見えるのは壁のシミだ」と返していたそうですが、そうすると相手は「そこにいるんだっ! 嘘をつくなっ!」と激しく怒る。

「正論で返してもダメなんですね。夫が求めているのは、いるかいないかのジャッジではない。知らない人がいて不安に思っている気持ちをわかってほしいんだと、本を読んでいるうちに理解できました」

 女性がとにかく心掛けているのは、頭ごなしに否定しない。夫の言葉に耳を傾け、不安に思っていそうであれば一緒に玄関や2階を見に行き、だれかが隠れていそうなカーテンは開け、部屋を明るくする。特に困っている様子がなければ、話を聞くだけで様子を見る。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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