「認知症の症状は、中核症状と行動心理症状に分類される」と、以前に紹介しました。行動心理症状は「BPSD」とも呼ばれます。
BPSDのひとつが、幻覚や妄想です。認知症の30~40%で何らかの幻覚や妄想がみられるという報告があります。アルツハイマー型認知症に限ると、初期の段階から幻覚がみられる頻度は低く、物盗られ妄想など妄想の頻度が高い。
一方、レビー小体型認知症では初期から幻覚(中でも、幻視)があるといわれています。幻視は、人物、動物、物や場面などが現実と区別をつけられないほど生々しく見える現象です。
レビー小体型認知症で最も多いのは人物の幻視で、「部屋を子供が走り回っている」「戸棚の上に小人が数人いて踊っている」など。色や動きについては伴う場合もあれば、そうでない場合もありますが、声や音に関してはたいてい伴いません。人物に次いで、イヌやネコなどさまざまな動物や、ムカデ、チョウといった虫の幻視もよくあります。
第一人者が教える 認知症のすべて