第一人者が教える 認知症のすべて

「BPSD」のひとつが幻覚や妄想 認知症の30~40%でみられる

写真はイメージ(C)iStock

「認知症の症状は、中核症状と行動心理症状に分類される」と、以前に紹介しました。行動心理症状は「BPSD」とも呼ばれます。

 BPSDのひとつが、幻覚や妄想です。認知症の30~40%で何らかの幻覚や妄想がみられるという報告があります。アルツハイマー型認知症に限ると、初期の段階から幻覚がみられる頻度は低く、物盗られ妄想など妄想の頻度が高い。

 一方、レビー小体型認知症では初期から幻覚(中でも、幻視)があるといわれています。幻視は、人物、動物、物や場面などが現実と区別をつけられないほど生々しく見える現象です。

 レビー小体型認知症で最も多いのは人物の幻視で、「部屋を子供が走り回っている」「戸棚の上に小人が数人いて踊っている」など。色や動きについては伴う場合もあれば、そうでない場合もありますが、声や音に関してはたいてい伴いません。人物に次いで、イヌやネコなどさまざまな動物や、ムカデ、チョウといった虫の幻視もよくあります。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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